3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
第一話「胸の痛み」
天にも昇るような気持というのはきっと、この胸の張り裂けるような高鳴りと
勝利を確信した幸福感の事を言うのだろう。
「遂に…遂にこの日が来てしまったか」
2月14日。 人生で16回目のバレンタインの日。
冬の風が吹き抜ける放課後の学校の屋上で僕『翔』は人を待っていた。
待ち人は僕の通うこの高校のマドンナ的存在であり、僕の幼馴染。
そしてこれから僕の彼女になる人だ。
ガタンッと屋上の扉が開いた音がした。
噂をすれば影、どうやらおいでなさったようだ。
「はぁ…はぁ、お待たせ~。
ごめんね、自分から呼び出しておいて遅刻なんて。
予想以上に日直の仕事が長引いちゃってね」
僕の待ち人、『史緒里』だ。
相当慌ててきたのだろう。
肩で息をしながら制服をパタパタと制服の襟元をバタつかせていた。
最初のコメントを投稿しよう!