友人の元へ参る

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「…………僕はさ、墓に向かって土下座して、それで精算出来るんなら、そうしてる」 知ってる。とは言わなかった。 思っても言わなくていいことがある、言わないで話を聞くだけの方がいいことも、きっとある。 だから力の抜けた声で吐息混じりに小さくそう言うヤスヒトに、俺は何も言わなかった。 けど……。 「腹をカッ捌いてこの首を飛ばしてなかったことにできるなら、とっくに僕は死んでたと思う」 「そんなんじゃどうにもなんないから、俺達はここにこうして立ってるんだよ」 けどこれは、言うべきだと思った。 ヤスヒトが言うのは、なんだか悲しかったから。 俺が言いたかった。
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