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落合慎一はプロ野球選手の肩書を武器に花柳界でも名を馳せた花柳界随一のホームラン王だった。しかし今は違う。
「女遊びの出来ない男なんて、ちっとも魅力を感じないわと君は言ってたよね。それで言えば、僕は魅力的な男であって君と出会う前までは女遊びをじゃんじゃんしていたが、君と出会ってからは女遊びをぷっつりやめてしまった」
「どうして?」
「君のようないい女を他に求めようがないからさ」
「ほんとに?」
「ああ」
宝塚トップ女優の星影真愛はケンシロウの異名を持つ慎一の見るからに逞しい筋肉ムキムキの腕と分厚い胸板に抱かれると、自分の華奢な肩が砕け、豊満な乳房が押し潰される感覚を伴いながら幸福感と安心感に痺れ、慎一はもっともっとと強くとせがむ真愛にこれ以上強くしたら真愛が壊れてしまうよと言っても壊して壊してとせがむ真愛の柔肌を節くれ立った手で優しく愛撫しながら真愛との愛を確かめ合い続けた。
「もし、僕が未だに何人もの女と肉体関係を持っていても君は僕に魅力を感じるのかい?」
「それとこれとは話が別だわ。私は女遊びを沢山してる男の人を独り占めにしたいの」
「じゃあ今の状態が最高なんだね」
「そう」
やがて慎一は真愛の大好きな自分の硬くて太くて隆々と伸びた肉々しいバットで特大のホームランを放った。
その瞬間、外野スタンドでホームランボールをナイスキャッチしたような無上の法悦を味わった真愛は、慎一と結ばれた儘、こんな時でも強かに発破をかけた。
「私との愛に溺れてばかりいては駄目よ。本物のホームランをかっ飛ばしてね!」
「ああ、分かってるさ。真愛の為にホームラン王を必ず獲ってみせる!」
彼は真愛の為ならどんなきつい練習もどんなきつい要求も買って出る。彼はプロ野球界のホームラン王に向かって走り出したのだ。
彼は偏に一途に走り続けた。自分の為、真愛の為、時には或るファンである病気の子の為に。彼はファンの為にと綺麗事を言う偽善家では決してなくてベーブルースのように無償で、その子の為にホームランを打ってその子を元気づけた。そのことも真愛の心を強く惹き付けた。
その後も彼は美しい放物線を描くホームランを量産した。人間だからスランプの時期もあったが、苦難を乗り越え、ライバルを追い越し、遂にホームラン王を獲得した。
年俸は何倍にも倍増し、児童養護施設で育った経験もあってか、慈善家でもある彼は、救われない子供たちや貧しい人たちの為に寄付をした。そのことも真愛の心を強く惹きつけた。
腕白少年から一匹狼へ、そして花柳界のホームラン王からプロ野球界のホームラン王へ、そして彼は絶世の美女、星影真愛とシーズンオフ中に結婚したのだった。
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