憧れの豪華客船へようこそ 1.突然の花嫁宣言

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憧れの豪華客船へようこそ 1.突然の花嫁宣言

「この美しい女性が私の花嫁です」  日本人にしては珍しいヘーゼル色の瞳が、わたしを見つめて甘く微笑んだ。  彼の言葉は綺麗なクイーンズイングリッシュだ。でも、日本を旅立って数日、英語が耳に慣れてきたせいかスムーズに脳内で和訳される。 「bride――はなよめ?」 「ああ、私の妻になる人はきみしかいない」  今度は念を押すように日本語で。誤解しようがない。  やや高めに作られたステージの上で向かいあうわたしとその男性。ステージのまわりを囲むパーティーの出席者たちが想定外の発表にどよめく。  新人OLのやっと取れた春休み。気ままな一人旅で、思いきって乗った豪華客船。  そのウェルカムパーティーの最中に、まさかプロポーズまがいの台詞を言われることになるなんて……!  しかも、これまで恋人がいたこともない地味なわたしが、日本人離れした眉目秀麗な男性に。こんな状況、ありえない。 「えぇっ、花嫁? それは話が違――」  小さく声を上げたわたしの唇に、彼の長い人差し指がそっとふれた。軽くウインクする姿は外国のロマンス映画の俳優のよう。  うわ、かっこいい……。
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