憧れの豪華客船へようこそ 1.突然の花嫁宣言

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 わたしの耳に聞こえるのは、二人の唇がふれあう音だけ。 「もう離さないよ」  耳もとで、そんな低音のつぶやきが聞こえた気がした。 「なんで、こんな」  ファーストキスを奪うなんてひどい。  本物の恋人でもないのに。しかも、見知らぬたくさんの人々が見ている前で。  抵抗しなければと心のどこかで思うのに、まるで夢の中のような状況に体が痺れて動けない。  これは、ときめき?  ……まさか、ね。  驚きのあまり、感覚が麻痺しているだけだ。豪華客船のラグジュアリーな雰囲気に飲まれて逆らえないだけなんだ。  本当に、どうしてこんなことになってしまったのだろう……。  わたしはその後の運命を変えることになった、ほんの数時間前のハプニングを思い起こしていた。
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