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すぐにも失礼しようと顔を上げた時、海堂さんが気になることを言いはじめたので、また腰を据えてしまった。
スタッフや食事の質ではなくて、船自体がいいって何かしら。つい好奇心がうずいていまう。
海堂さんはワインを一口飲むと、窓の外を見た。外は暗い夜空だけれど、頭の中で何かを思い描いているようだ。
そして、ふたたびわたしのほうに向きなおり、抑えた声で話しはじめる。
「ああ。ヨーロッパ最大の造船所で建造されたこの船は、当時『世界最大最高の客船』というコンセプトで造られた。エレガントでクラシカルな内装もそうだが、船体の設計のクオリティーが素晴らしいんだ」
「船体の設計?」
「安定した高性能な動力はもちろん、居住空間を広く取るため内燃機関をもうける場所を工夫し、振動の少ないガスタービンをメインにしたことで居住性を上げた。すべてが一流だ」
「へえ……」
あえて低い声で落ち着いた雰囲気を作っているようだけど、海堂さんの目はキラキラ輝いている。少年みたいな興奮が隠せていない。
ああ、この人は船が好きなんだなと思った。
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