憧れの豪華客船へようこそ 1.突然の花嫁宣言

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 わたしの平凡な日常生活では見たこともないきざな仕草に、思わずドキッとしてしまった。そして、そのことにちょっとむかつく。  期間限定で恋人のふりをするって契約だったのに、いきなり花嫁ってどういうこと? 「もうきみ以外は考えられないんだ、鞠香(まりか)。きみは私の気持ちをわかってくれるね?」  容姿だけ見れば、芸能人も真っ青なイケメンだ。  百八十センチ以上はある長身に、彫りの深い顔立ち。髪や瞳の色が平均的な日本人より明るくて、どこか西洋の血を感じさせた。  だけど、その性格は問題あり!  いくら世界に名だたる海堂(かいどう)ホールディングスの御曹司だからといって、強引で傲慢すぎませんか? 「鞠香? 約束したよね」  心配そうにわたしの顔をのぞきこむ御曹司。  くっ、顔がいい。 「うぅ……」  ……負けた。  いや、顔じゃない。  つい空気を読んでしまう日本人としては、好意ばかりじゃない好奇心に満ちた周囲の視線を感じて、彼に恥ずかしい思いをさせるのが悪いと思ってしまったのだ。
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