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「きみのあのレモンイエローのドレスもかわいらしいが、あの服だけではクルーズライフを楽しめないだろう。特別な空間に一流のゲストが集う船だ。このセレブリティクイーンにふさわしいドレスを私がプレゼントしよう」
「は?」
今、ドレスをプレゼントって言った?
「…………は?」
縁もゆかりもない海堂さんが、なぜ? なんのために?
顔のいいベテラン結婚詐欺師みたいな言い草に、警戒心が湧きあがる。
「ドレスやアクセサリー、ヘアメイクなども含めて、きみがこのクルーズを心置きなく満喫できるよう全面的に手を貸す」
「…………」
「そのかわりに一つ、私の頼みを聞いてほしい」
ニヤリと人の悪そうな微笑みを浮かべる海堂さん。
どうやらプレゼントとやらには交換条件があるらしい。
そうよね、ただより高いものはないというもの。
胡散臭さが少し薄らいで、逆にほっとした。
「頼み、ですか……」
わたしの前準備が悪かったせいで、船内行事をいろいろあきらめなくてはいけないと覚悟したのに、参加できる可能性が出てきたのだ。
せっかくなら、この一流の船のすべてを見たい。
なんとなく嫌な予感はしたものの、わたしの気持ちは傾いていた。
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