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今夜会ったばかりの人とはいえ、犯罪者というわけではないし、綺麗なイブニングドレスも貸してくれたし。
恋人を大袈裟に花嫁と言い換えた程度の表現の違いなら、まあ許容範囲かな?
「はい……。花嫁、ですね。了解です」
「ふっ、よかった。I love you, Marika. How about you?」
脳内翻訳……しなくてもわかる。わかりたくないけど。
『愛しているよ、鞠香。きみは?』
男らしい顔に浮かぶ甘い微笑み。いかにも上等なオーダーメイドのタキシードに包まれた、よく鍛えられた体。そして、世界的企業の後継者ともくされる超エリートの地位。
誰がどう見たって、極上の男だ。
その絶滅危惧種なみに希少な御曹司の長い腕が、わたしの腰に回る。
「Marika?」
でも、本当にたちが悪い。
そんなこと公衆の面前で言わせるなんて嘘でしょう? わたし、これでもシャイで奥ゆかしい大和撫子なんだから。
しかも、これは単なる契約の関係なのに!
「くぅー」
「鞠香?」
「はい! わたしも翔一郎さんをあ、あ、あ」
「あ?」
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