憧れの豪華客船へようこそ 1.突然の花嫁宣言

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 今夜会ったばかりの人とはいえ、犯罪者というわけではないし、綺麗なイブニングドレスも貸してくれたし。  恋人を大袈裟に花嫁と言い換えた程度の表現の違いなら、まあ許容範囲かな? 「はい……。花嫁、ですね。了解です」 「ふっ、よかった。I love you, Marika. How about you?」  脳内翻訳……しなくてもわかる。わかりたくないけど。 『愛しているよ、鞠香。きみは?』  男らしい顔に浮かぶ甘い微笑み。いかにも上等なオーダーメイドのタキシードに包まれた、よく鍛えられた体。そして、世界的企業の後継者ともくされる超エリートの地位。  誰がどう見たって、極上の男だ。  その絶滅危惧種なみに希少な御曹司の長い腕が、わたしの腰に回る。 「Marika?」  でも、本当にたちが悪い。  そんなこと公衆の面前で言わせるなんて嘘でしょう? わたし、これでもシャイで奥ゆかしい大和撫子なんだから。  しかも、これは単なる契約の関係なのに! 「くぅー」 「鞠香?」 「はい! わたしも翔一郎(しょういちろう)さんをあ、あ、あ」 「あ?」
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