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「あ、愛してます! I love you, too!!」
その時、目の錯覚かと思うくらいのわずかな瞬間だけど。
彼――海堂翔一郎が笑った。
さっきまで見せていた表面だけの微笑みじゃなくて、心の中の喜びが思わずあふれてしまったような素直な笑顔。
「え……?」
でも、その素顔はすぐに消え去り、どこか人を食ったような御曹司づらがふたたび現れる。
「よくできました」
「わ……、何!?」
翔一郎さんの指先がわたしのあごにふれ、クイッと上向かせると、突然――キスされた。
男らしいさわやかなコロンの香り、強引な指先の熱、思ったよりずっと柔らかい唇の感触。
生まれて初めての、キス。
若い女性たちの「きゃーっ」という悲鳴が響いた。
その直後、さらに深く抱きこまれ、翔一郎さんの熱い舌がわたしの口の中に入ってきた。
「んっ、あ……」
頭の中から音が消えた。
ウェルカムパーティーの会場に流れていた生演奏のクラシック音楽も、グラスとグラスがふれあう乾杯の音も。
何百人もその場に集まっているはずのゲストたちのざわめきも。
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