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「テル。あれほど人物確認はちゃんとお願いと……」
女神は少年の頬に触れて少し眉を寄せる。
「女神さまっ!ちゃんとしたんですよ!冴崎涼真、26歳。顔も営業成績も優秀な為に上司に妬まれて刺殺!傷は……」
必死に身振り手振りで説明していた少年はこっちを見てピタリと動きを止めてからため息を吐いた。
「……すいません。どう見ても人違いですね」
おい!それはどういう意味だ?ん?
こっちを見た時の少年の残念そうな顔。
確かに俺は毎月成績ノルマさえ達成できないダメ社員だし、今までまともに彼女も居たことがなくてフラれ記録更新中だけど……。
その冴崎ってのと一緒なのは26歳男……以上か?
「とにかく、間違いなら元に戻せよ!これでも一応取引先に行くとこだったんだ!3時にアポだからさ!」
何となく落ち込みつつ息を吐き出して、まだかなりダルさを感じながら首を回す。
「いや、それが……」
少年が指先を擦り合わせながら何やら言いにくそうにこっちを見た。
「ごめんなさい。死んでしまった人間を戻すことはできないです」
「はぁ?」
少年の横に立って女神は頭を下げて、俺はすっ飛んだ声を上げる。
「じゃあ、俺は……」
目の前がクラッと暗転した気がした。
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