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連鎖一週目 疑惑
「生理的に好きなんです。
付き合ってください!」
生理的に嫌いというのは聞いたことがあるが、逆もあるのか。
まぁ、だからといって、どうということはないのだが。
既に俺の答えは決まっていた。
「ごめん。
中西さんのこと、好きなんだけど、そういう風には見れないっていうか…」
「それはつまり恋人にはなれないってこと?」
「まあ、そういうことになっちゃうかな。
ごめん。でも中西さんのこと…」
「だよね!だよね!
ごめんごめん、私気にしてないから!
今後も普通にしてね!」
中西さんはそう言って足早に去っていった。
なぜか最後笑顔だったような気がするのは、俺に気を遣わせないようにするための優しさだろうか。
だとしたら、あまり喋ったことはない子だったけど、いい子なんだな。
もったいないことしたかな。
生意気に「友達から始めよう」とか言ってもよかったかな。
いや駄目だ。
恋に情けは無用だって誰かが言ってた。
誰か忘れたけど。
でも、それにしてもだ。
俺は放課後一人で歩きながら思った。
なぜだ?
最近、俺は異様なペースで告白を受けている。
先々週に岩崎さん。
そして先週に峰さん。
三日前に和田さん。
そしてさっきの中西さん。
間隔もどんどん短くなっている。
告白がとまらない。
そう、モテっぷりがとまらないのだ。
もちろん、悪い気はしないがなぜ急にこんなことになったのだろう。
見た目が性格が突然変わるわけがない。
人生に何度かやってくるモテ期とかいうやつだろうか。
誰かがカッコいいと言ったらつられて自分にもカッコよく見えてくる女性脳の神秘みたいなやつの影響だろうか。
こんなことを自分で言うのは悲しいが、それにしても一体俺の何が良かったのだろう。
というのも、最初に告白された岩崎さん以外はほぼ喋ったこともないような同級生だからだ。
外見で、というから分かるが、俺は特別美形ではないし高身長でもない。
廊下を歩いてるだけで視線を浴びたことも、体育のバスケットボールで得点を決めたときに女子が騒ぎ立つこともなかった。
そもそも得点を決めたこともない。
美容室に行くときは未だに緊張するし、服屋でズボンを買うときはキチンと店員さんを呼んで裾合わせをしてもらう中肉中背の平均顔だ。
そんな俺なのになぜなんだろう。
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