連鎖二週目 氷解

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群衆をかき分けて、久我山さんの元へ向かう。 「久我山さん!」  思っている二倍の声が出た。 久我山さんは少し驚いた表情でこっちを見ている。 それよりもおそらく久我山さんと一緒に帰る予定だった近くの子がびっくりしている。 正面突破しかない。 「ちょっと話があるんだけどいいかな?」 久我山さんは少し首を傾げたあと、一緒に帰るはずの友達に「先に帰っといて」と伝えた。 明日から噂になってしまう。 しかしもう逃げることはできない。 俺は、ここぞと例の人気の少ない校舎の踊り場に久我山さんを連れて行った。 踊り場に着くと向かい合って少しの間沈黙した。 久我山さんもとっくに察しはついているだろう。 「く、久我山さん…」 「ん、なぁに?」 あぁ、かわいい。 目が合った。 「久我山さんさ、きゅうりとなすびだとどっちの曲線が好き?」 何を言ってるんだ俺は。 「きゅうりとなすび? うーん、なすびかなぁ」 何を聞いてしまったんだ俺は。 「そうなんだぁ。 俺はさ、久我山さんが好きなんだけど」 何を言ってるんだ俺は。 「え?」 「久我山さんの方が好きなんだけどどうかな?」 なぜ野菜と比較してるんだ俺は。 「え?どうって? よくわからないけど、ごめん。 友達待たせてるから行くね。 ごめん」 …終わった。 二回も謝られた。 謝りたいのはこっちの方なのに。 なぜリハーサル通りにできなかったんだ。 終わった、あっけなく。 俺の夏は、高校生活は終わった。
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