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バッグを開けた。今日は持ち物が多く、バッグはパンパンに膨らんでいる。その中をまさぐって、携帯を取り出した。
誰に出そうかな。こんなとき、恋人がいればね。
少し迷ってから、久しぶりに学生時代の友人に打ってみることにした。暗闇の中、手元だけが青白く光る。『久しぶり、元気? 最近どう?』
送信。画面を閉じる。カチリ。そんなにすぐ返事は来ないだろうと思いながら、すぐにまた画面を開く。カチリ。
「あれ?」
画面には、『送信できませんでした』の文字が光っていた。
何でだろう?
もう一度、送信。今度は画面をそのまま見守る。が、同じだった。
『送信中』…………『送信できませんでした』
……?
きっと、電波の調子が悪いのだろう。あきらめて携帯をバッグに入れた。
道はずっと暗い。静子はだんだん不安になってきた。
本当にこっちでいいのかしら? でも線路沿いに歩いていけば間違いないはず……あっ。
いつの間にか、横にあったはずの線路が消えていた。線路があった場所には、高い塀が続いている。
しまった。携帯に気を取られているうちに、線路沿いの道から外れてしまったんだわ。
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