1人が本棚に入れています
本棚に追加
慌てて後ろを振り向いても、塀が続いているばかりで、その向こうは暗くてわからない。
どうしよう……でも、曲がったりはしてないと思うんだけど。
多分、方角的にはそんなにずれてないはずだ。今さら引き返しても、どのくらい戻れば元の道に戻れるかわからない。
静子は、そのまま進むことにした。
びゅうっ。風が吹き抜けていく。今、自分がどのくらい進んでいるのかわからない。時間を確かめようとして携帯をもう一度取り出したが、充電が切れたのか、画面がつかない。舌打ちをしたくなった。
こんなことなら、最後まで飲み会にいるんじゃなかった。
今日の飲み会は、静子の同期の、高谷(たかたに)の婚約祝いだった。社内恋愛で、相手は入社したばかりの女の子だ。
同僚から昼休みに初めてその話を聞き、静子は驚いた。高谷は、静子にとって気になる存在だったからだ。それなので、めずらしく飲みすぎてしまった。
「二次会に行かないで帰ればよかった。でも仕事のあと、ちょっと買い物してから行ったから、遅れちゃったし……」
最初のコメントを投稿しよう!