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今日中にどうしても買っておきたいものがあって、そのせいで飲み会に少し遅れてしまったのだった。遅れてきて早めに帰るというのも、気が咎めた。
高谷と花嫁は、みんなの祝福を受けて幸せそうだった。
道はまっすぐ続いている。先は見えない。もしかして、本当に道に迷ってしまったのだろうか。
途方にくれていると、
「でね」
すぐ近くで突然声がした。静子は飛び上がりそうになった。
「で俺、ほんとのところ、そのとき笑っちゃいそうだったんですよ。でもさすがに、それはまずいじゃないですか」
振り向くと、そこには先ほど声をかけてきた青年がいた。静子は驚いた。
いつの間にそこにいたのかしら? それにこの人は、タクシーに乗っていったのではなかったの?
静子の視線に気づき、青年ははにかんだような笑みを浮かべて言った。
「ああ、やっぱり俺も、歩くことにしたんですよ。車より、そっちのほうがいいかなって」
そう。
「だから俺、かろうじて堪(こら)えたんですよ。心の中じゃ、笑い転げてたんですけどね」
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