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青年は一体、何の話をしているのだろう。静子は黙って歩き続けた。青年はしゃべりながら、横をついてくる。
「こうね、祖父(じい)さんの遺体の頭に、三角形の白い布を巻くんですよ。そうです、あの、よくうらめしや~っておばけがつけてるやつ。で、それつけた祖父さんが棺おけに横たわってて、その中にみんなお金を入れるんですよ。それもお札じゃなくて、ジャラジャラと小銭ばっかり。参列者はみーんな、小銭のお金を棺おけの中に入れなきゃいけないんです」
「なんかね、三途の河の渡し賃ってことらしいんです。このお金を舟守りに渡して、少しでも良い旅をしてくださいね、って意味」
そうなの。
「だけど、三途の皮の渡し賃って……小銭が重くて、逆に舟、沈んじゃいそうじゃないですか?」
…………。
「……俺も、棺おけ持って運ぶ人の一人だったんですけど、だから棺がすごく重いんですよ。歩くたびに、ジャラジャラ、ジャラジャラって音がして。で俺、肩に担ぎながら、それ聞いてるうちに、なんかこう……いやーな気持ちになっちゃって」
そう。
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