5644人が本棚に入れています
本棚に追加
男はそう言いながら、ゴールドに輝くクレジットカードをカウンターの上に置く。
「承知致しました。清算をさせて頂きますので、こちらに記帳をお願いできますでしょうか。領収書の宛名はどのように致しましょうか。」
今まで無意識に言っていた台詞も、信じられないほどにしどろもどろになっている。
必死で平静を装っているが、このままでは何かミスをしそうだ。
私は宿泊名簿を男に渡し、カウンターの上に置いてあるゴールドカードを手にする。
男はカウンターに置いてあるメモ用紙にサラサラと何かを書き始めた。
メモ用紙に走らせる男の手は男らしく骨ばっている。
その手が昔から私を知っていたかのように悦ばせてきた、昨日の夜のことが頭を過ぎる。
「領収書の宛名はこちらでお願いします。」
私の顔をじっと見ながら手渡してくる。
あまりにじっと見てくるので、その視線が私の上に跨っていた時の視線と重なる。
男の手と視線のせいで体の奥が再び熱くなり、心臓が暴れ出す。
「清算してきますので、少々お待ち下さい。」
何かを考える余裕もなく、とにかくクレジットカードを精算機に突っ込み清算を終える。
最初のコメントを投稿しよう!