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曖昧な朝
「んんっ。」
人の声が耳に入ってきて目が覚める。
「っ。」
目の前に飛び込んできたのは上半身裸で私の隣で眠っている男の姿。
一気に昨日のことが頭をよぎる。
快楽に歪んだ男の顔と声が想い出される。
隣で眠っている男の顔に目を向ける。
整った顔に長いまつ毛。
日頃から鍛えているのか、上半身は引き締まっている。
まじまじと観察をしていると、もぞもぞと男が動く。
私の心拍数は一気に上がる。
相手が起きて私を見てがっかりされたら、立ち直れない。
甘い記憶を甘いままで置いておくのが良い。
男が起きる前にそっとベッドを抜け出し、散らばった服を集めて急いで身に着ける。
音を立てないようにとドアを開ける。
最後にベッドで眠る男を見てから、そっと部屋を後にした。
急いでエレベーターに向かう。
エレベーターに乗り、1階のボタンを押して扉を閉めるボタンを連打する。
エレベーターの扉がゆっくりと閉まる。
密室になったところで体の力が抜ける。
今まで真面目に生きてきたから、こんな朝を迎えて自分でも驚いている。
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