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「そんな大げさに言うなよ。あれ、お前昨日と同じ服じゃない?」
直樹から指摘されて悪いことをしている訳ではないのに、急に後ろめたくなってくる。
「昨日、隣のホテルのバーで飲んでたら、飲み過ぎちゃって帰れなくなって泊まったのよ。もちろん一人でね。」
「ほんと寂しい女は可哀そうだな。俺に声かけてくれれば、最後まで介抱してあげたのに。」
「今度飲むときは声掛けるから、最後まで介抱してね。もちろん沙織ちゃんも一緒に。」
冗談が言い合える直樹との距離感は気に入っている。
直樹の彼女の沙織ちゃんも、めちゃくちゃいい子で二人して私のことを心配してくれている。
「お前明日は非番だっけ?」
「非番の予定だったけど、受付に人足りないみたいだったから出勤。」
「勤勉なことで何よりだな。そういう俺も明日出勤になった。お互い頑張ろうな。」
直樹とそんな話をしながらそれぞれの更衣室に入っていく。
更衣室に入って着替えをする。
昨日まであったホテルの名前と自分の名前が入ったバッチがない。
ロッカーの中、どこを探しても見つからない。
最後にどこで触ったかも思い出せない。
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