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スーパー
「ママ、おしっこー。」
「おしっこ?はいはい。
ちょっとトイレ行ってくるね。」
子供が押していたカートを預かり、その場に留まる。二人と離れた場所から動くと合流するのに面倒、という程立派なスーパーに来ている訳ではない。何となくいつもそうしている。何となく、いつもの買い物でいつもの突発的な、いつもの過ごし方。まだ半額にならない惣菜コーナーにも足が進まない。
“凛君。”
呼ばれた?気がして辺りを見渡し、
右肩に何か当たった?気がして、
「久しぶり〜!元気〜?買い物?」
「雨宮さん!お久しぶりです!家族で買い物来てます、真緒ちゃんも久しぶりじゃん〜。」
えへへ。と恥ずかしそうにママにくっついて笑いかけてくる。子供ってもんは誰でも可愛い。
「ねえ元気にしてんの〜?凛君会社辞めてからLINEからも消えちゃうし、皆んな心配してるよ〜?」
「あー、辞めてすぐの時期ちょっと揉めてて、色々あってLINE消しちゃったんですよ。」
「あれ、亜希ちゃんと鈴ちゃんは?」
「鈴がトイレって、一緒に行ってます。そう、
だから仕事辞めた時期はキツかったですけど今はもう大丈夫です。元気っす。雨宮さんちは相変わらずラブラブですか?」
「んな訳ないじゃん!ね〜?」
「真緒ちゃんもウンウンじゃないよ。今日旦那さん仕事ですか?」
「ん、そうそう。あ、LINE交換してよ。
亜希ちゃん帰って来る前に!」
「あ、分かりました、じゃあ俺のQRで。
これで、後でLINEください。
流石、分かってますね。」
「大丈夫、変なLINE送ったりしないから。ウチの旦那も厳しいからさ〜。」
「相変わらず愛されてますねー。」
「勘弁してよ!じゃあ真緒、そろそろ行こうか!」
前の職場で二人とも仲良く働いていて、というか俺も同じ職場で、雨宮さんは俺らの事をよく理解してる。良くも悪くも。いや多分良くは無い。
こうして、良い匂いのする惣菜コーナーを眺めて。その前に、声を潜めて。その声に振り向いてからの、この心拍数がいつもと違くて。
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