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送る
「じゃあ雨宮さんは俺が送りますよ。」
「駄目。黒崎は危ない。私が送る。」
「え、何で?」
「俺既婚者だから、は通用しません。信用出来ません。危険です。」
「まぁ黒崎君は…。ごめんなフォロー出来なくて。」
「俺まだそんな扱いですか?」
「うんまぁ、女癖悪いしチャラいしコロコロ変わるしクズかな。さいてー。」
「それ野村さんですよね。」
「馬鹿。俺は愛妻家だよ。」
「二人とも黙れ。」
「すみません。」「ごめんなさい。」
俺らは何に何で謝ってるんだろう。前の職場の飲み会にお呼ばれしてもらって、酒飲んでなくて一番下っ端だった俺が送迎係やった方がいいかなと思っただけなんだけど。雨宮さんと帰りの方向同じなの俺だけだし。てかもうよくない?独身の頃の若気の至りじゃん、交際相手が短期間で変わってたのもその当時その時のたまたまじゃん、彼氏彼女なんてそれぞれ真剣かつそんなもんでしょ、ちょっと時期が被る事だって長い人生一瞬くらいあるでしょてかもう時効じゃない?許して下さいよ。あと俺はチャラくないです。
「恭子ちゃん大丈夫だよ逆方向だし、帰りはお望み通りアッシーになってもらう!あ、でも家着くまで一応テレビ電話してもらっていいかな?」
「んーまぁそれでも安心出来ないですけど。黒崎お前絶対手出すなよ。」
「二人とも酷い。」
本当に、二人とも酷い。まじでテレビ電話してやがる。純粋に送ってあげてるだけなのに監視が必要なんて俺を何だと思ってんだ。あと二人とも職場の男性陣の悪口言い過ぎ。怖い。怖いよ。雨宮さんはほろ酔いで良い気分かもしんないけど恭子さんは何、あなたシラフでしょ。やめて。もうやめて。せっかく前の職場の名残惜しさ思い出してたのにもう覚めて少し冷めたよ。多分俺辞めてよかったよ。
「あ、ちゃんと着いたよ〜。
ほら!
『よかったー!じゃあ雨宮さんお疲れー!
おい黒崎、帰れよ。』」
「帰りますよ。お疲れ様でしたー。」
ポロン。
と、ようやく静かな空気を取り戻してすぐ、
“もう、帰るの?”
やっと、空気が落ち着かない。
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