嘘やん……

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(……) 驚きすぎて固まっているあたしの前まで来ると、 「遅くなってすみません。ちょっと片付けないといけないことがあって」 爽やかに告げる様子にはあの夜のことなど微塵も感じさせない。 (嘘……) もう二度と会うはずのない相手との遭遇に頭が働かない。 「まだ信用されてないみたいだな。悪いけど一緒に来て」 その笑みはどこか面白がってもいるようだった。 (どういうこと?) 連れて来られたのはどこかのマンション。 広々としたリビングに通されて動けずにいると、 「ちょっと待ってて。好きにしてていいよ」 (いやあの、そんなこと言われても無理だからっ!!) 濃い色のソファーに恐る恐る腰を下ろし、辺りを見渡し、品のいい調度品に多少びくびくしていると、 「はい、どうぞ」 渡されたカップにはミルクを落としたコーヒーが入っていた。 (あれ) 「違った?」 「……合ってるけど」 あたし、こんなことまで話した? 「本当に覚えてないんだ。向こうがブラックしか飲まないから遠慮してミルク向こうの家に置けなかった、とか」 「ふぇっ、」 (あ、変な声出た) 何しろ始めてのお付き合い。 傍から見れば滑稽だったくらい、気を回していた。 (逆にうっとおしくなったのかな) いや、だからって妻子持ちなのを黙ってたのは許せないけど。 頭の中でいろんな感情がせめぎ合い、返事ができないでいると、 「かわいいな」
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