嘘やん……

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「うそでしょ……」 身体中に広がる筋肉痛にも似た鈍い痛み。 見覚えのない、ホテルと思わしき室内には広いベットが目立つように配置されていて、あたしはそこにいた。 ご丁寧にも後ろから抱き締められた体勢で。 規則的な鼓動が背中に響く。 (ってちょっと待って!!) そのことが示す事実にあたしの全身が、かっと熱くなり、次の瞬間冷や汗が落ちた。 (待って昨日は……) 五年も付き合っていた相手が妻子持ちだと知り、バックに遠心力つけて叩きつけてやって、その後やけになってバーに駆け込んでやけ酒して……。 (まさか) この年で未経験、って訳じゃないし流石にナニがあったかは分かる。 分かるけど、 (テンプレすぎるやろ、自分っ!!) 浮気(どっちかというと不倫か)されてバーで男引っかけて一夜を共に、ってどこの三文小説っ!? (小説とかだと大体イケメンとかで、あれこれあったけど最後はハピエン、って普通はないからっ!!) 大体その辺のバーにそうそうイケメンは落ちていないはず。 (そもそも会ってすぐこれ、ってどう考えても一夜限りの相手ってことじゃないっ!!) とにかくここは逃げの一手、とそろりと体を起こそうとしたその瞬間腰から背中の辺りにかけて甘い衝撃が走り抜けた。 「……」 かろうじて声にはしなかったものの、余韻がじんじんと流れ、力が入らない。 (ちょっ、まさか)
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