I am zombie

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「いいか、ゾンビっぽく走るってのはな、こうするんだよ」  そう言うと細田さんは、一気に背筋を縮こませると、今にももつれて倒れるのではないかという足取りのまま、器用にスピードをあげると、そのままこちらに向かって腕を大きく振りかぶって飛びつこうとしてきた。 「ウワアアアア!!」  ……って、なんでこっちがびっくりしなきゃいけないんだよ!! 本物なのに!! 「はっはっは、驚いたか。怖さっていうのはな、こういう、ちゃんと典型的な動きをしてこそ生まれてくるものだ。見た目がいかに本物に近いからってな、動きがそれっぽくなければ全然怖くないんだよ」  え、じゃあ俺のこの見た目でも全然怖くないの? 完全に腐りきってると思うのだけれど。ある意味全力疾走してくるゾンビって一番怖いと思うのだけれど。  まあでも確かに細田さんの動きは、俺たちが想像するゾンビの動きそのものといった感じで、こちらに迫ってくる様はリアリティがあった。完璧なゾンビスタッフとなるには、見習わなきゃいけない姿勢なのかもしれない。 「よし、とりあえずまずは、背筋を丸めて歩く練習だ。いいか、いかにももう歩くだけで精一杯です、という雰囲気を出すんだぞ」 「コ、コウデスカ……」 「違う! もっと背筋を丸めて、足も引きずるようにするんだ! それじゃあただのやる気のないサラリーマンだぞ!」 「コ、コウデスカ……」 「よし、いい感じだぞ。だが、それではただ足を痛めただけの酔っ払いだ。もっと、この世に存在しているだけで辛い、という雰囲気を醸し出すんだ」  ちょっと待って、この世に存在しているだけで辛いって何。ゾンビのことなんだと思ってるの。暗に俺のこと皮肉ってるの?  そんなこんなで、俺は細田さんの何とも言えない指導を受けながら、日々ゾンビスタッフとして、研修と鍛錬を積んでいった。
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