2人が本棚に入れています
本棚に追加
突然で申し訳ないが、俺は佐々木。ゾンビだ。
数か月前、俺は突然悪漢からの暴行を受け、そのまま死んでしまった。生前の俺は、一部の界隈ではそれなりに有名だったから、恨みを買っていたのかもしれないが、まあとにかくそんな死に方だったから、この世に多少の未練が残っていたのではと聞かれたら、確かにそうなのだろうと思う。
だとしても、何故火葬がメインのこの国で、俺が幽霊ではなくゾンビとして蘇ってしまったのかはまったく意味が分からない。死んでからの記憶はないし、俺の遺族はちゃんと俺を弔ってくれなかったのだろうか。それにしたって普通燃やしはするだろう、他の人が。しかもなんでこんなにちゃんと理性を保ってるんだ。脳は腐ってないのか、脳は。
とにかく、何故か腐った肉体と共に目覚めてしまったわけで、そう簡単に死ぬこともできない身なので、ひたすらに退屈で、戯れでゾンビホラーを売りにするテーマパークに潜入してみた。
ここはすごい。スタッフたちは皆ゾンビメイクをしていて、夜になると人々を襲うためにパーク内に繰り出すのだ。俺はホラーがまったくもって苦手だったから、生前だったら絶対に来ることはなかっただろう。自分がゾンビになってしまっているという事実が一番のホラーだが。
とはいえ、最初はすぐにバレると思っていた。だって、いくら周りがゾンビの恰好をしていたって、俺は本物なのだからさすがに一線を画してしまっているし、そもそも腐っているのだから、匂いがとてつもないことになっていると思ったのだ。
なのに、俺はこのテーマパークに勤めて、もう一週間が経とうとしてしまっている。おかしい。何故誰も俺に疑問を抱かない。しかも俺は今、ゾンビスタッフとして研修中の身である。研修ってなんだ。俺は最初っからゾンビなんだよ、どうあがいても。
最初のコメントを投稿しよう!