研究熱心な変人侯爵の相手は疲れます。

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 思えば、旦那様は一生懸命私を愛してくれていたのに。誤解していてさえ、愛されてるのかと錯覚してしまうほど。それは錯覚じゃなかったのだけど。 「旦那様……」 「ニーナ、できれば名前で呼んでほしい」  切なげに旦那様が言う。  躊躇いを見せた私に、急いで続けた。 「あぁ、ごめん、ニーナ。お前が許せると思ったときでいいよ」  あきらめたような微笑みに、胸が痛くなる。 「違うんです。許すとかそういうのではなくて、名前を呼んだら想いが溢れてしまいそうで、呼べなかったんです」 「…………それはどんな想いだ?」  サフィリア様は緊張したような焦がれるような顔をして問いかけてきた。 (もう言ってもいいかな? 許されるかな?)  私は息を吸って、サフィリア様の青い瞳を見つめた。それはすべてを受け入れてくれるような眼差しだった。それに安心して、私は想いを込めて言った。 「サフィリア様、好きです。愛しています」 「ニーナ……!」  青い瞳が潤んだ。  次の瞬間、強く抱きしめられて、熱いもので唇を塞がれた。 「部外者は立ち去りましょう」  シグモントさんとゾフィーさんを促して、退出するアルマさんの声が背後から聞こえた。  私達は唇を何度も重ね、お互いを感じ合った。        一際強く吸ってから唇を離したサフィリア様は、宝石の瞳をきらめかせて、私を見つめた後、ふいに跪いて、私の手を取った。 「ニーナ、愛してる。これからは言葉を尽くしてお前に心を捧げると誓う。だから、改めて僕と結婚してほしい」 (サフィリア様……こんな真っ直ぐに私を愛してくれてる人をどうして疑えたんだろう)  私を愛情深く見つめる瞳はずっと変わっていない。  言葉はなくてもずっと愛してると言われていた気がしていた。  私が信じられなかっただけ。  私はその手を握り返して微笑んだ。 「はい。サフィリア様、喜んで。私もあなたを愛しています。これからは不安や希望やなんでもちゃんと口に出して言います」 「うん、なんでも言ってくれ。でも、もうお前を不安にすることはしないよ」  サフィリア様は立ち上がって、私を抱きしめた。  その背中に手を回して、ぴったりくっつく。  
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