3.のど飴とサービス残業

2/6
前へ
/287ページ
次へ
「お疲れ様です」  ゆっくりとドアを開くと――  (あっ……!!)  嫌な予感は的中。  副部長と目が合ってしまった。  それもそのはず、もう既にオフィスには副部長以外誰もいなかったからだ。  挨拶は返してくれたものの、すぐにパソコンへと目を向けてしまった。  (気まずい、非常に気まずい。はやく部長の席を見つけないと!!)  書類ケースを抱え、きょろきょろと動き回っていると、パソコンに目を向けたままの副部長は「部長の席は隣……」と教えてくれた。 「あ、ありがとうございます」  なぜ部長の席を探しているのがわかったんだろう。  しかし今はそんな事どうだっていい。  早くこの息苦しい部屋を出て行きたい。  部長の席の横にそっと書類ケースを置くと、なるべく足音を立てないようにして、出口へと急ぐその時だった。 「ちょっといい?」 「は、はい!!」  私は勢いよく振り返った。 「仕事手伝ってもらっていい?」  私にはそれが依頼ではなく命令のように感じられ。  いつもの愛想笑いで頷くことしかできなかった。  
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加