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副部長は、私を少し離れた隣の席に座らせるとノートパソコンを目の前に置いた。
画面には、簡易的な表が作られていた。
「この通りに入力してくれる」
手渡されたA4用紙は、見積書なのだろうか。
商品毎に、複数の価格帯が手書きで記入されていた。
商品数は……100点はありそうだ。
「33行目まで入力してるからさ、30分までに全部終わらせて。先方に送るデータだから」
「はい」と返事をしつつも、パソコンのタスクバーにある時計に目をやると、20時15分。
(あと15分で、60件近くなんて!)
とんでもないパワハラ上司だ!
しかし、この前机を片付けて貰った借りもあるわけだし……。
今さら『できません』なんて恐くて絶対に言えないし……。
あぁ、間に合わなかったらどうしよう!
って、そんなこと考えている暇はない。
恐怖から逃げるように、ひたすら入力に専念した。
隣に座る副部長も、カタカタと慌ただしくキーボードを叩いていて。
時計の秒針と、エアコンの風と、二人の打鍵音が交差する。
時折、外から足音が聞こえたが誰もオフィスに入ってはこなかった。
最後の1行の入力を終え、時計を見ると約束の2分前。
なんとか間に合ったのだと、ほっと胸を撫で下ろす。
隣をチラリと見てみると、真剣な表情でノートパソコンをにらみつける横顔があった。
(うぅ…………。声かけずらい)
私は恐る恐る口を開いた。
「あ、あの終わりました……」
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