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「間に合った……」
数分が経った頃、副部長のため息混じりの声に振り向くと、珍しく安堵した表情を浮かべていた。
「よ、よかったです!」
私の仕事が少しでも副部長の手助けになれたのだと思うと頬が緩んでしまった。
副部長はそんな私からすぐに目をそらすと、素気なない声で言った。
「本当助かった。ありがと……」
(あ、ありがとう……!?)
まさか、副部長からお礼の言葉をかけてもらえるなんて……。
感謝される事に慣れていない私は思わず椅子から勢いよく立ち上がる。
「あ、いえいえ、そんなこと!!」
慌ててドアへと向かう私を制するように、副部長は突然デスク横の引き出しを開けると、ごそごそと音を立てながら何かを取り出した。
「んっ」
そう言って副部長が手渡した物を反射的に受け取ろうと、手を伸ばす。
(のど飴…………?)
「体調悪いんだったらさ、最初から俺の仕事断れよ。……って、今さら言うのは、ずるいよね?」
自分自身に呆れたように言い放つ冷たい声。
表情から少しだけ申し訳なさそうに見えたのは、願望からなのだろうか。
「い、いえ! そんな! あ、あの! あめ、ありがとうございます……」
そう言い終わらないうちに、なぜか涙が込み上げてきて、うつむいた。
「お、お疲れ様でした!!」
震える声を必死に抑えながら頭を下げ、部屋を出た。
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