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私達が座った六人掛けのテーブルは、社内でも気の知れた女の子ばかりでほっとした。
辺りを控えめに見渡すも、副部長の姿は見当たらない。
乾杯を終え、きらきらとした前菜を食べ終わった頃だった。
まわりのテーブルが、急に騒がしくなった事に気がついた。
「篠原さーん! こっちでーす!!」
営業部の女の子数人が、椅子から立ち上がり大きく手を振っていた。
(副部長の名前、たしか篠原だったような……?)
答え合わせをするように、ちらりと視線を向けてみると。
そこには、黒いコートを着た副部長がいた。
瞬間、どくんと胸が脈を打つ。
慌てて視線をそらしたはずなのに、いつの間にか視界の端で追っていた。
「篠原さーん、遅いですよー!」
「ごめん! なかなか先方に電話繋がんなくって」
女の子達に促されるように、私の向かいのテーブルへと座る副部長。
隣に座る可愛い女の子は、ビールを注いであげていた。
さっきまでの高鳴る期待は急に消え失せて。
前に座る戸田さんに隠れるように、身体の向きを変えていた。
私とは対照的な、可愛いくて明るい女の子に笑顔を向ける副部長。
(半年も前に貰ったのど飴なんかで浮かれちゃって……)
きっと、副部長はとっくに忘れているはずなのに。
コース料理もデザートへと差し掛かり、くじ引きのために読み上げる社員番号に一応耳を傾けるも。
結局、私の社員番号は最後まで読み上げられないまま、忘年会はお開きとなりすぐに二次会への招集が始まっていた。
周りにさりげなく挨拶をすると、そっと席を立ち急いで店を出た。
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