4.ホットサンドと忘年会

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 12月の夜風はすごく冷たくて、マフラーに顔をうずめる。    今日は仕事納めの会社も多いようで、オフィス街近くの繁華街はにぎわっている。  居酒屋の香ばしい煙。  すれ違う人の香水の匂い。  年末は誰もが楽しそうに見える。    (はぁ……。新しい服まで買って、いつもよりメイクなんか頑張って。何やってんだろう)    この繁華街に一番似合わない顔をして、数メートル歩いた時だった。 「たなかぁー!!」  聞き覚えのない陽気な声に名前を呼ばれた。 (あれ? お店に忘れ物でもしちゃったかな……)    そう思い、振り向くと―― (え!? ふ、ふ、副部長!!)  肩を少し上げ寒そうに私の元へと駆け寄ってくる副部長は、さっき着ていた黒いコートさえ羽織っていなかった。 (な、なんで? 私なんかが副部長に話しかけられてるの?)  急なことに混乱していた私は、ただただ駆け寄ってくる副部長の姿を目で追っていた。  が、やはりいつもと様子が違っている。  目元はとろんと垂れ下がり、口元は(ゆる)んでニコニコとしていて。  それに足元は、ふらついている。  (なるほど、ものすごく酔っ払ってる…………) 「話しかけようと思ったのにー、目も合わせてくれないんだなぁー」 「え? いや、そんなこと……ないです。す、すいません」  (いつもと、キャラがだいぶ違うような……) 「この前のお礼、ちゃんと言えてなかったから……」 「え?」 「田中が見積書作ってくれたから、締めまでになんとか提出できたし。そのおかげで商談も上手くいってさー」 「そ、そうなんですね! お役に立ててよかったです」  いつもより饒舌な副部長。  相当酔っ払っている事は明らかだった。  それなのに、感謝され素直に喜んでしまう。    愛想笑いなんかしなくても、自然と笑顔になっていた。    副部長は私を満足そうに見つめると、何かを思い出したように、突然目を見開いた。  
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