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「あっ! 田中、くじ引きなんか貰えたー??」
「え、あっ、いえ……」
「じゃー、ちょーどよかったー。せっかく忘年会来てくれたんだし」
副部長は手に持っていた紙袋を差し出した。
(え? 私に? まさかこれを渡すために、コートも着ないで追いかけてくれたってこと……?)
って、さすがに自惚れすぎだよね。
なんだか、普段と違いすぎる副部長に思考が追いついていかない。
「え……? あ、でも副部長が当たったやつじゃ……」
「これ調理器具らしくて、俺自炊とかあんましないからー」
副部長がもう一度私にさし差し出したので、頭を下げ受け取った。
「ありがとうございます」
顔を上げ副部長を見ると、とろんとした目で優しく笑っていた。
まるで時が止まったようだった。
さっきまで気になっていた行き交う人の声も周りの音も聞こえずに、その笑顔に目を奪われる。
「じゃー、気つけてなー」
「あ、あの。お、お疲れ様でした!!」
ハッと我に返ると、寒そうに腕を抱え去って行く副部長に深々とお辞儀をした。
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