146人が本棚に入れています
本棚に追加
繁華街を抜けて、急ぎ足で一つ目の角を曲がると大通りへと出てきた。
心臓の位置がはっきりわかるぐらい、激しく脈を打っていて。
副部長のとろんとした笑顔を思い出すと胸の奥がきゅーんと締め付けられる。
まさか話しかけてもらえるなんて、夢にも思っていなかった。
紙袋を持った手を軽快に振り、今にもスキップしてしまいそうな私がビルのガラスに映っていた。
(私って、ほんと単純……)
このままどこまででも歩いていけそうな気分ではあったが、さすがに夜も遅い。
通りすがりのタクシーに乗ると、自宅へと向かった。
私の弾んだ気持ちとは反対に、マンションはいつもより静寂に包まれているように感じた。
帰宅してテレビをつけると、帰省ラッシュに伴う混雑状況が、高速道路の上空からの映像と共に伝えられていた。
(そっか……。もう今年も終わりなんだ…………)
最初のコメントを投稿しよう!