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「それ、俺のなんですけど」
私の頭よりずいぶん上の方から声がした。
(えっ!? 私…………?)
まるで冬に逆戻りしたような冷たい声。
それが、自分に向けられたものではない事を願いつつ振り向くと。
スーツを着た若い男性が、蔑んだ目で私を見下ろしていた。
「あっ、えっ……」
すぐに目をそらすも、恐怖のあまり後ずさり。
「いやだから俺が先に並んで、そのチャイラテ注文してたんですけど」
「あっ、すす、すみません」
声を荒げずとも伝わる、軒並みなるぬ威圧感にビクリとして。
なんとかこの場を終わらせようと、必死に頭を下げるだけ。
「いや、もういいんで」
怯える私に、ため息混じりの言葉を吐き捨て、行ってしまった。
「す、すみませんでした!!」
さらに深く頭を下げると逃げるようにカフェを出た。
(こ、こ、怖かった…………)
あの害虫を見るような目…………。
確認しなかった私も悪いけど、何もそこまで言わなくたって。
って、わかってますよ……。
(どうせ、私がブスだからですよね!?)
もしも、かわいい女の子が瞳をうるうるーってさせて謝っていたら。
『気にしなくて大丈夫だよ』なーんて笑顔で許してたに違いない。
(はぁ、可愛くなりたい……。結局、見た目が全てじゃん……!)
せっかく気持ちの良い朝だったのに……。
やっぱり私なんかが、カフェになんて来るんじゃなかった。
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