5.フラペチーノと挨拶

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(――ふ、ふ、副部長!!!)    この蒸し暑い中、涼しい顔をして颯爽と歩いていた。  そんな姿につい見とれてしまった。 (って……。何うっとりしてんだ私は!!)  はっとして目をそらすと、くわえていたストローのことをやっと思い出し急いで口から遠ざけた。 (こんな時に出くわすなんて……店内で食べてこればよかった)  ビシッとスーツを着こなす副部長とは対照的に、今の私は健康診断のための脱ぎ着しやすいラフな服装。  髪は湿気でボサボサに膨らんでいたし。  極め付けは、両手に持つフラペチーノと大きなサンドイッチである。 (はぁ、今は一番会いたくなかった……)  だんだんと近づく革靴の音が、私の心拍数を上昇させる。  普段どこを見て歩いていたのか今は思い出す事もできず、さっきから目が泳ぎっぱなしだ。  (でも……。もしかしたら…………!)    あの日の優しくとろんとした笑顔を思い出すと、教えたはずのない名前をまた呼んでくれることを待ち望む。
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