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「ご自宅って、どの辺なんですか?」
エレベーターから降りた部長はわざわざ立ち止まり、心配そうな表情を浮かべる。
「あー、えっと。駅の近くです! 南口から真っ直ぐ行ったとこで……。あ、なので、結構ここから近いんで。えっと……大丈夫ですよ!」
親身になってくれる部長がいる一方で……。
副部長は、私が雨に濡れて帰ろうが関係ないとでも言いたげに、片足に重心をかけスマホをいじっている。
嫌でもその姿が目に入ってきて、威圧感から私はしどろもどろになりながら答えていた。
そんな私を見てなぜか部長は、ニコニコというよりニヤニヤとした笑いをこらえながら副部長に目を移す。
「あ! それなら篠原の家、その辺りだったよな?」
「…………はぁ?」
副部長は、唐突な問いかけにスマホから顔を上げ眉をひそめると、冷ややかな視線を部長へと向けた。
(副部長って私のうちの近所に住んでたんだ。って、まさかこの流れ、副部長が私を送るってことにならないよね…………?)
もしそんなことにでもなったら、土砂降りの中歩いて帰るより恐ろしいかもしれない……!
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