6.折りたたみ傘と大雨

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 ビルの駐車場から出ると、  待ち構えていたように大粒の雨がフロントガラスを叩きつける。  一瞬空が光ると、ゴロゴロという音を響かせた。  (副部長がいなかったら、今頃この土砂降りの中、歩いて帰ってたんだよね……) 「道()んでんな」 「そ、そうですね。こんな中、すみません……」  明日から連休に入る企業も多く、それに加え猛烈な雨。  オフィスビルが立ち並ぶこの周辺は大渋滞だ。  なかなか進まない車に、副部長はイラついているのか片手で握ったハンドルを、あの長い指でトントンと叩く。   「すみませんって言うんなら、この辺で降ろしてあげよっか?」 「えっ…………」 「()()()()持って、歩いて帰ってみたらどうです?」 「あ、いや、そ、そんな……」  さっきの私の言葉を使って、嫌味ったらしく返される。  あからさまに送ってもらうことを拒んでいたから、副部長もいい気はしなかったのかも。    でもそれは、副部長に迷惑をかけたくないと思ったからであって。    気分を害しているのではないかと、不安になり視線を向けたが、遠くを見つめるその横顔に表情はなかった。
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