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「あ、あの! 頂いたホットサンドメーカー、すごく良くてですね。私でも、まぁまぁ上手にできまして……」
「あ、そう」
勇気を振りしぼり声をかけてみたものの、あまりにも冷たくそっけない相槌だけが返ってきた。
こんなしょーもない話、興味あるわけないか。
もう話しかけるのはよそうと、肩を落としていると。
「ホットサンドって、何入れんの?」
どうでもよさそうに尋ねる副部長。
(本当は興味なんてないくせに……。また気を遣わせてしまった)
「えっと。ハムとチーズですね……」
「へぇー」
「あ! それとミートソースとチーズも、なかなかよくてですね……」
「へー」
(待って……、この話にオチなんてないんだけど。どうしよう、何かおもしろいこと言わないと!)
「あ、えっと! お餅とあんこを、はさんでみたんですけど、それはちょっと重たくて。やっぱり、胃もたれしたんですよね…………」
(って、何言ってんだ私は)
いやに長い間のあと、意外にも副部長は呆れたように鼻で笑う。
「いや、どーでもいいわ」
「そ、そうですよね。す、すみません……。あははは」
「そういや、田中って意外とよく食べるよね?」
「そ、そんなことないですよ……」
「いつだっけ? 両手にサンドイッチとフラペチーノ持ってさ、歩きながら食べてたじゃん?」
「そ、そうでしたっけ……。あははは」
さっきより副部長がたくさん話してくれたのは嬉しかったのだが……。
(あんな見苦しい姿、まだ覚えていたの!?)
できることなら、副部長の記憶を『ダークチェリーのデニッシュに、アイスコーヒーを持った可愛い田中さん』に書き換えてしまいたいぐらいだった。
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