6.折りたたみ傘と大雨

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「あ、あの! 頂いたホットサンドメーカー、すごく良くてですね。私でも、まぁまぁ上手にできまして……」 「あ、そう」  勇気を振りしぼり声をかけてみたものの、あまりにも冷たくそっけない相槌だけが返ってきた。  こんなしょーもない話、興味あるわけないか。  もう話しかけるのはよそうと、肩を落としていると。 「ホットサンドって、何入れんの?」    どうでもよさそうに尋ねる副部長。  (本当は興味なんてないくせに……。また気を遣わせてしまった) 「えっと。ハムとチーズですね……」 「へぇー」 「あ! それとミートソースとチーズも、なかなかよくてですね……」 「へー」  (待って……、この話にオチなんてないんだけど。どうしよう、何かおもしろいこと言わないと!) 「あ、えっと! お餅とあんこを、はさんでみたんですけど、それはちょっと重たくて。やっぱり、胃もたれしたんですよね…………」 (って、何言ってんだ私は)  いやに長い間のあと、意外にも副部長は呆れたように鼻で笑う。 「いや、どーでもいいわ」 「そ、そうですよね。す、すみません……。あははは」 「そういや、田中って意外とよく食べるよね?」 「そ、そんなことないですよ……」 「いつだっけ? 両手にサンドイッチとフラペチーノ持ってさ、歩きながら食べてたじゃん?」 「そ、そうでしたっけ……。あははは」  さっきより副部長がたくさん話してくれたのは嬉しかったのだが……。    (あんな見苦しい姿、まだ覚えていたの!?)   できることなら、副部長の記憶を『ダークチェリーのデニッシュに、アイスコーヒーを持った可愛い田中さん』に書き換えてしまいたいぐらいだった。
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