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「今から残業?」
伏し目がちに尋ねる姿からは、怒っているわけでも残業の命令でもなさそうで、ほっとした。
「あ、はい……」
とは言え、クリスマスイブに残業だなんて、副部長には知られたくなかったのが本音だ。
どうせまた馬鹿にされるだろうと覚悟して、小さくうなずいたのだが。
なぜか、それ以上は何も言わなくて。
ちらりと見た横顔が一瞬、物悲しそうに見えた気がした。
静まり返った部屋には、自販機のコンプレッサーの音だけが妙に際立って聞こえる。
副部長はテーブルの上のクッキーをちらりと見ると、低めの声で呟いた。
「それ犬用?」
「え? いや、ちがいますよ!!」
苦笑いする私をよそに、今度は品定めでもするかのようにじっと眺める。
「ほねの形のクッキーなんて、好んで買うやついるんですね?」
皮肉っぽく感心する姿は、大変失礼なのだが……。
自分用に取って置いた失敗作を、ほね型だと分かってくれた事に少しおかしくなる。
「これ、手作りなんです」
つい油断して、本当の事を言ってしまった。
「え、田中が作ったの?」
副部長は、目を見開き珍しく驚いたかのように思えたが。
その表情は、次第に薄ら笑いへと変わっていく。
「あ、はい………………」
やっぱり言わなきゃよかった……と口ごもる私を、嘲笑的にそして満足そうに見つめると。
悪びれる様子など全くない、涼しい顔で言い放つ。
「俺、手作り苦手なんだわ」
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