9.ミルクティーとクリスマス

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 こんな私が、誰かを笑顔にできるはずなんてなかった。  それ以来、夢見ることをやめ、ひっそり生きていこうと心に決めた。    期待するから、悲しくなるし。  理想を持つから、つらくなる。  最初から何も望まなければ、傷付かずに生きていける。    そう思っていたはずなのに……。    副部長の美味しそうに食べる横顔が。  私に向けてくれた、温かい声が。    押し込めていたはずの本当の気持ちを、簡単に引き出してしまう。    叶えたかった夢も。  誰かに愛されたいという願いさえも。    気まぐれで、無意識の優しさなんかにこれ以上振り回されたくないと思いながらも。  あの優しさを、私だけのものにできたとしたら、どれほど幸せなのだろうか。  
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