2.机と再会

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 ビルを出ると、5月の夜の風はまだ少し冷たい。  ここから数十メートルのバス停まで歩き、あと数分のバスを待つ。  片側3車線の道路とたまに通過する車を漠然と見ながら、深いため息が漏れた。  きっと今日1日で色んなことがありすぎたせいだ。    親睦会では誰にでも気さくな笑顔で話していた副部長。  時折聞こえる声も、柔らかくて穏やかだった。  それなのに、私にだけ冷たい態度って……さすがに落ち込んでしまう。  手伝ってくれた事は、もちろんすごく感謝してるけど……。  それは、カフェできつく言った人が、取引先の社員だと気付いたからで。  仕方なく親切にしてあげたに違いない。  ……って、人の善意をそんなふうに考えてしまうなんて良くないけど。    さっきより深いため息をついた時、小さくバスの姿が見えてきた。    
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