memory 2

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(いと)様の髪はとても綺麗ですね。」 佳弥乃(かやの)がふわり、と笑った。 「いえ、そんな…。」 長く手入れをしていない髪は、ボサボサでお世辞にも綺麗とは言えない。 「長くて黒髪ですもの。きちんと毎日お手入れすれば、艶がでてさらに美しくなりますわ。」 絃に向けられた彼女の目から、ただ純粋にそう思ってくれていることがうかがえる。 「出来ました。」 佳弥乃が、(くし)で絃の髪をとくのをやめた。 「ありがとうございます。佳弥乃さん。」 「お礼を言われるなど、とんでもないです。明日は髪を結いますので、楽しみにしていてくださいね。」 ふふ、と上品に笑う佳弥乃に絃も笑みを返す。 ふと、佳弥乃が微笑みながら時計を見た。 「そろそろお時間でしょうか。お部屋に行かれます?」 問いかけに絃は頷くと、立ち上がった。 「やはり、紅色にして正解でしたね。とてもお似合いですよ。」 佳弥乃がにこりと笑って、絃が着ている着物を見ている。 「ありがとうございます。」 佳弥乃の言葉は、絃の心にすっと入ってくる。 誰も傷つけない、優しい言葉。 彼女の心は、きっととても綺麗なのだろう。 ふんわりと包み込むような笑みを見せる佳弥乃とともに、絃は座敷をあとにした。
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