memory 2

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大広間に、使用人がずらりと並んで頭を下げている。 「顔をあげろ。」 一言指示を出すと、佐伯(さえき)に続いて(みな)が顔をあげた。 「おはようございます、紫月(しづき)様。」 使用人の声がピタリと揃う。 その様子を戸の外でうかがっている人物の気配を感じた。 「誰だ。」 問うと、気配の中に怯えがまじった。 佐伯に、戸を開けるよう促す。 佐伯が戸を開けると、現れたのは、紅色の着物を着て、黒髪を軽く結った女性。うっすらと化粧も施されている。 「遅くなり、申し訳ございませんでした。」 その女性の隣にいた佳弥乃(かやの)が、頭を下げる。 佳弥乃が側にいるということは、まさか。 「(いと)、か…?」 思わず紫月が問いかけると、女性は口を開いた。 「…はい。絃です。このような上等なお着物をありがとうございます。大切に着させていただきます。」 絃は、少しばかり口元に笑みを浮かべる。 昨日とはまるで別人のよう。 酷い仕打ちを受けていたとは思えないようだ。 「絃様、お綺麗ですよ。」 佐伯が微笑む。 「いえ、そんな…。でも、ありがとうございます。」 まだ手足は細く健康的ではないが、昨日よりは大分良くなったのではないかと思う。 あとは、その心の傷に紫月が寄り添うだけだ。 「絃。朝食にしよう。」 「は、はい。」 ──何があっても守る。儚くて、すぐに消えてしまいそうだから。 今までに感じたことのないこの気持ちは、何だろうか。 知らぬ感情に紫月は戸惑いつつも、絃に包み込むような笑みを向けた。
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