memory3

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*** 「九重(ここのえ)様、ようこそいらっしゃいました。あら、そちらの方は?」 紫月(しづき)の用がある、『小物屋やよい』にて。 ニコニコとする女性の視線が(いと)に向けられた。 「あ、あのっ。」 ──何と答えればいいのだろう。 返答に困る絃の横から、紫月の声がした。 「私の連れだ。」 紫月の言葉を聞いて、女性はますます笑顔を浮かべた。 「あら、珍しい。九重様が佐伯(さえき)さんではなく女性の方を…。」 そう言いながら女性は店の奥から包みを持ってきた。 「こちら、頼まれていたものです。」 「ああ、感謝する。それと、この者に合うものを選んでくれないか。値段は気にせず良いものを選んでくれ。」 「分かりました。」 紫月は絃を見て笑う。 「絃。好きなものを選べ。私は少し、外を歩いている。ゆっくりしているといい。」 「え、あのっ!?」 あっという間に絃は取り残され、紫月の姿は見えなくなった。
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