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「どうして言うことが聞けないの!!」
バシン、と音が響くと同時に、絃の頬がじんじんと痛みを感じる。
また叩かれたのだ、と理解するのに時間はかからなかった。
「─────っ!」
叩かれたのは、これで何回目だろうか。
絃を叩いた母本人は、満足そうに意地悪い笑みを浮かべている。
周りにいる絃の家族は、まるで絃たちのことが見えていないかのように、見向きもしない。
「あなたが悪いのよ?あなたが私の言うことを聞かないから、こんなことになるの。」
─────言うことを聞かなかったから。
使用人がいるにも関わらず、使用人以上の雑用を押し付けられ、一日で終わりきらなければ、言うことを聞かなかったことになるのだろうか。
どうして。
そう問いたいのに、問うても無駄だと、どこか諦めている自分がいた。
「ちょっと、聞いてるの?返事くらいしなさいよっ!」
また振り上げられる母の右手。
絃は固く目を瞑った。
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