memory3

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「わたくし、この店で小物を売っております、弥生(やよい)と申します。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」 女性──弥生が笑顔のまま問いかけてくる。 「蘭絃と申します。」 絃が答えると、「では選びましょうか。」と言って弥生は早速、髪飾りが置いてある場所を探り出す。 「絃様。何かお好きなお花があったりしますか?」 「えっ?」 「絃様、とても綺麗な黒髪ですから。何か髪飾りがあると、より美しいなと思いまして。」 屈託のない笑顔を見せる弥生。 「どのお花がよろしいですか?」 訊かれるまま側に寄り、目を通していると、1つの髪飾りに目が留まった。 「こちらは、糸括(いとくく)りという桜の1種です。花言葉は『精神美』。絃様のお名前が入った桜ですね。」 弥生が説明をしてくれる。 絃はそろり、とその髪飾りを手に取った。 ──綺麗。 淡紅色の花が、まるで糸で(くく)ったように重なって、束になっている。 「これが、いいです。」  はっきりと、口にした。 絃の言葉を聞くと、弥生はにこりと笑う。
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