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「どうぞ、つけてみてくださいな。」
そう言われたものの、髪飾りをつけたことがない絃は、付け方がいまいちわからず困惑する。
その様子を見て、弥生がクスッと笑った。
「おつけしましょうか。」
「お、お願いします…。」
絃の髪に飾りをつけながら、弥生はいかにも気になる、といった様子で絃に問い掛けた。
「絃様は、九重様の恋人様であられるのですか?」
「こ、恋っ!?」
思わず前につんのめりそうになった。
『恋人』という言葉すらも言えぬまま、ごほごほとむせる絃を弥生は優しげに見つめる。
「ち、違いますよ!!ありえないです、私がその…恋人だなんて。なろうとも、微塵も思っていませんし。」
首を振る絃。
「あら、そうですか?九重様があんなにも優しいお顔をされるので、わたくしてっきり。」
──優しい顔。
絃に会ったものが必ずと言っていいほどに言う言葉だ。
そんなにも珍しいことなのだろうか、紫月が笑顔をみせ、優しく微笑むのは。
九重紫月という人は、いったい周りからどのような印象なのだろう。
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