memory3

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考え込んでいると、外から戻ってきた紫月(しづき)が店の中に入ってきた。 それを見て、弥生(やよい)がゆっくりと口角をあげる。 「あら、お戻りになられましたか。」 「ああ。」 紫月は一言返事をすると、(いと)の頭についている飾りに目を()った。 「…桜、か。似合うな。」 ポツリとそう、一言。 それだけで、絃の頬は淡く桃色に染まる。 その様子を見て、弥生が笑みをこぼした。 「糸括(いとくく)り、というのですよ。絃様の牡丹(ぼたん)のお着物ともよく似合っていますわ。」 そう言われて、紫月は絃の着物に視線をやった。 淡緑の地に、牡丹が咲き誇っている着物。 瑠璃(るり)のような紺色に近い深青の地に、紅の花枝模様が入った帯を締めている。 ──美しい。 着物に身を包み、品よく座る彼女は、可憐(かれん)で儚く、淑女と呼ぶにはじゅうぶんすぎるほどだった。 「絃はさきに店を出ていてくれ。」 「わかりました。ありがとうございます。」 紫月の言葉に絃は頷くと、店をあとにした。
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