memory3

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店を出ると(いと)は、辺りを見回した。 ボロボロの着物を着て、道に倒れたことを思い出す。 あれからほんの少ししかたってないというのに、今はこのような着物を着て紫月と買い物に来ている。 天と地ほどの変わりように、夢なのではないか、と疑ってやまないのも仕方がない。 「…はぁ。」 ため息をつく。やはり、都の喧騒は絃には合わない。 人で溢れかえる場はあまり好きではないな、と思いながら視線をめぐらせていると。 ふと、茶店に目が留まった。 静かに近寄ってみると、ガラスの中に、数々の菓子が並んでいる。 ──憧れていた。 来客のときに出されていたお菓子。家族で茶会をするときにも、必ずあったお菓子。 口にしたら、どれほどに甘いのだろう。 食べる者誰もが顔をほころばせ、幸せそうな顔をする。 それだけで、美味しいものだということは、すぐにわかった。 1度でいいから、口にしたい。 「はっ、いけない。」 つい見惚れてしまった。あまりにも素敵で。美味しそうで。 絃は慌てて、『小物屋やよい』へ戻ろうと、体の向きをかえた。 その時。 ドンッ 絃の肩が誰かとぶつかり、絃は地面へ倒れこむ。 「すみません!」 真っ青になって顔をあげると、絃はその目に映った人物に、絶句した。
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