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3対3のコンパ帰りの風早真由美は、同期の成美と好子の二人と歩いていた。
「ちょっと、そこのあなた。何か悩んでるみたいね」
と聞こえてきた。
「ん?」
歩みを止め少し振り返った真由美だったが、自分ではないと思い歩き出そうとした。
「そう、そこのあなたよ」
その声はビルとビルの細い道の方から聞こえてきた。
振り返ると"易”の文字が灯っている机の向こうに黒い影が見える。
真由美は、眉間に力を入れ、もう一度振り返ってみた。
目をこらして見ると、声の主は頭から黒いベールをかぶった女性のようだ。
顔はよく見えないので、どのくらいの年齢かは
分からなかったが、本当に怪しげとしか言いよ
うがない。
「ちょっと視てあげるわよ」
"いやいや怪しすぎるわ”
頭の中では危ないから近づいてはいけないと
警告ランプが鳴り響いているのに
体は反対にするすると引き寄せられ椅子に
座ってしまった。
成美と好子のことを放って。
"二人はけっこう酔ってるから私がいないこと
にも気がつかないかな″
「結婚相手を求めてるみたいだね。
うーん、三か月以内に二人の男と出会うよ。
どっちと結婚するかであんたの未来は大きく
変わってくるねぇ」
「えっ、本当ですか?もう28歳なんで、
そろそろ結婚したいんです。
私が幸せになれる相手はどんな人ですか?」
真由美は三年付き合った彼と一か月前に別れた
ばかり。
まだまだ遊びたい彼は、結婚を口にする真由美
を疎ましく思っていたようだ。
他に好きな子が出来たとフラれてしまった。
彼と結婚するとばかり思っていた真由美だった
が、意外とすぐに立ち直り婚活に精を出していた。
「そうね。年上の人と同じ年の人よ。
あなたはどちらを選ぶのかしら?
ふふふ」
「どちらを選べばいいか教えてもらえないん
ですか?」
「それは自分で決めなさい」
「…はい。わかりました」
内心では納得できていなかったが、真由美は
しぶしぶ答えた。
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