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プロローグ
人間は思考をし、行動し、成長する生き物だ。だから人間を分類して管理しようとしても、すぐにその枠に当てはまらないものが出てきてしまう。例えば『性別』の枠にしてもそうだ。第一性の男と女と枠を作ってもそこから抜け出すものがいるし、第二性のαとβとΩとしてもやはりそこからはみ出すものがいる。
とはいえ枠は大事だ。
枠が全てではないけれど、枠があれば大多数は管理が出来る。大多数が管理されていれば、それは国という形になる。国もまた一つの枠であり、枠はやがて世界となる。
つまり、枠に当てはまらないものがいるとはいえ、当てはまるものが世界に属しているとされるのだ。枠から抜け出せば、それは世界には属さない。だから『認識されない』。
前置きはこのぐらいにしておこう。
要するに言いたいことは枠組みからこぼれた人間は生きにくいということと、俺――前園光太はまたも第二性が『不明』と診断されたということだ。
その最新の診断結果を手に、俺は嘆いた。
「不明ってなんなんだよ……今もう、診断率99.98%なんだろ!? 俺もう三十回はうけてるのに0.02%に入り続けることあるかよ!?」
十一歳のときに学校で初めて受けた『第二性診断』。両親ともにβの俺は無難にβだろうと思いつつ、開いたら『不明』の文字。医者に聞いても『前例がないので原因はわからないんですけどー、前園さんの血液からはー第二性の特徴因子がなんも見つけられなくてー、まあ、なので多分βじゃないですかー? αとΩだったらー絶対わかるんでー』というご返答。
『じゃあもうβってことでいいか』と思いはしたが、『第二性』がわからないままそう名乗るのは嘘をついている気分だ。それで何度も自費で受けているのだが、今回もだめだった。
俺の血液は今日も世界に属する気がないらしい。
「はぁー、……また三千円無駄にした……」
今日は十九歳の誕生日、俺は未だに俺がなにかわからないままだった。
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